あらやピアノスタジオ
あぐらdeピアノ「ピアノ教師、保護者そして生徒へのメッセージ − アメリカに学ぶ」 新谷有功 著
第三章
初見演奏
(Sight Reading)
初見演奏はレベルを問わず、ピアノを習っている人なら誰でも出来なければならない技術であると私は考えています。
初見演奏が出来るということは、それイコール楽譜が読めるということです。ですから新しいページや新しい曲の練習を始めるときに大きな効果を発揮します。
逆のケースでいいますと、例えば弾きたい曲があったとしてその楽譜を買いに行き、お店でそれを開いてみたら「ああ、無理だ。」と思ったり、あるいは楽譜を買って家に帰ってピアノに向かっても「読めない。」、「弾けない。」ということになってしまいます。面白くありませんね。
初見演奏が苦手ですと、ピアノを弾くことが辛い作業となるわけです。生徒がピアノを止める原因の一つがこれではないかと私は思っています。
なぜかといいますと、私の教室に来る転入生のほとんどが初見演奏能力ゼロだからです。 助け船を出した人はまだ救われました。しかし、初見演奏に対する指導のまずさが原因でピアノを止めてしまった生徒を気の毒に思います。ですからそれを教えていない教師に怒りさえ覚えるのです。
一般的に多いケースが、3年もピアノを習っているのに楽譜が読めないといった状態です。3年分の月謝を返して貰いたい気分ですね。いったい教師は何を教えているのでしょうか?
まず生徒の初見能力を確かめる
ピアノ教師にとっては、ほとんどの生徒がよその教室から来ると言っても良いほど、転入が多いのです。主に引っ越しとかが原因ですが。
教師は新しい生徒に対して、その初見演奏のレベルを読み取ることが必要になります。これは案外簡単な作業です。
1 生徒が、「暗譜をしていないとピアノを弾けない」ような場合は、その演奏がどんなにすばらしくても要注意。楽譜を見ながら弾くというトレーニングが出来ていないからです。
生徒の前に楽譜を置き、ある音やフレーズを弾かせてみれば結果はすぐに出ます。
2 生徒の目が楽譜、鍵盤、楽譜、鍵盤というように、上、下、上、下、となっても要注意。目が上に行く度、自分がどこを弾いているのか、その音符を探さなければなりません。また、目が下に行く度鍵盤を探さなければなりません。これでは読譜に時間がかかり過ぎ、曲が前に進みません。こういう場合も初見演奏のトレーニングがされていないと考えられます。
3 逆に、目はほとんど楽譜を見、手をあまり見ないで弾き、しかも音楽がゆっくりでも流れているように聞こえる場合は、初見演奏のトレーニングができているとみて宜しいと思います。
生徒の目がどこを向いているかに注意しましょう。
初見演奏が出来ているかどうかを見分けるのは上記のようにやさしい事です。
しかしピアノを習い始めてから何年も経っているのに、初歩的なトレーニングが全くなかったような生徒に初見演奏を教えるのは、これまた生徒にとっても教師にとっても大変な忍耐が必要になります。
初見演奏はピアノの学習には無くてはならない技術ですから、がんばりましょう。
次に初見演奏の指導において、具体的な方法のいくつかをご紹介します。
初見演奏指導のポイント
1 どんなにゆっくり弾いても良いからから止まらないで弾く。リズムも崩さない。 その時に何個、音を間違えても良い。
とにかく、どんどん目を先に進ませ、止まらないで弾かせます。初見演奏は目のトレーニングだと言い切っても良いくらい、目の使い方が大切になります。
2 生徒の弾いている手を何かで覆い、手が見えない状態にし、鍵盤を指で探るように弾かせる。
目は当然、楽譜だけを見ます。
この1と2は同時に行っても良いですし、バラバラにやっても良いでしょう。
レッスンの都度、教師は宿題帳をつけますが、そこに初見演奏の欄を加えるのです。 そしてレッスンの中で、初見演奏のために10分程度の時間を費やすという方法がお勧めです。このやり方ですとあまり生徒の負担にならず、他に習っている曲の妨げにもならないでしょう。
初めのうちは生徒が嫌がる場合もあります。しかし、心を鬼にしてやってみましょう。半年後あるいは一年後にはちゃんと結果がでるはずです。
教材
初見演奏を練習するためのテキストは数々市販されていますので、どれかを試しに使ってみても良いでしょう。それがまずければテキストを替えれば良いのです。
私も市販のテキストを使うことがありますが、主にやさしい賛美歌を使います。
賛美歌は宗教的な要素が大きいので、保護者の了承を得てから使います。私は親の許可を貰った上で、イスラム教徒の生徒に賛美歌を使わせたことがあります。
賛美歌は、一つ一つのヴォイス、つまりソプラノならソプラノ、アルトならアルトの線がスムーズです。スムーズというのはこの場合、横に進む音符どうしの音程が狭いということです。賛美歌の音がスムーズなのはそれが理由です。
音程が狭いということは、鍵盤を目で見なくても、手探りで次の音を探すことができるということです。そういう意味で、賛美歌は非常に良い教材だと言えます。
しかし、4声(ソプラノ、アルト、テナー、ベース)の賛美歌を、いきなり初見演奏させるのは無茶です。レベルからいいますと賛美歌の四声体を全部初見演奏するのは、中級になります。一度に4本の線を読み取ることが出来るようになるためには、その前にある程度易しいトレーニングをしなければなりません。
ですから、初めのうちは賛美歌を易しくアレンジしたものを使っても良いのです。
その点から言いますと、別に賛美歌や初見演奏のテキストでなくても、横方向の音程のあまり飛んでいないもので、しかも易しいものであれば、だいたい使えると思います。
このようなトレーニングを、初めは1声だけで行います。そして、慣れてきたら、2声、3声という具合にヴォイスを増やしていくわけです。
注意
ここで気を付けたい事が一つあります。
賛美歌をピアノで弾いたことのある方は数多くいらっしゃると思いますが、もし、その楽譜を縦、つまり和音で読んでいたとすれば、それは大きな間違いです。縦に読んでしまっては、横の線が見えなくなります。つまりそれは横方向の音程で読んでいないということなのです。これでは初見演奏の原理から逆行してしまいます。
初見演奏のトレーニングでは目を横方向に動かさないと横の音程が見えて来ません。
縦方向に和音として読む勉強は、音楽理論の中にちゃんと出てきますので、ここでは心配要りません。
実践
1 出来るだけ易しい曲を選ぶ。
例えば初級者で、まだフラット調を勉強していない人なら、シャープ調の曲、例えばト長調とかニ長調の曲を選びます。
その曲が何の調であるかを生徒が言える曲でなければなりません。曲をある程度理解した上で演奏するというのはピアノ教育の大前提だからです。
ト長調がわからない生徒ならハ長調の曲を選べば宜しいでしょう。
2 トレーニングに使う一声を指定する。
一つのヴォイスを、教師が指定しても良いですし、生徒に選ばせても良いでしょう。
3 鍵盤に手を置き、その手を覆う
その選んだ一声の、最初の音の鍵盤に指を置かせ、教師が薄い本などを使って生徒の手を覆います。
4 初見開始
どの指から始めても結構です。ただし、ルールは前述のように、ゆっくり弾いても良いですし、音を間違えても良いです。しかし、止まらない。そしてリズムを崩さない。常に先へ先へと目を動かすのです。そして決して楽譜から目を離さない。とにかく弾き続けることが大切です。
5 アイディア
私の場合、自分(教師)が鉛筆を持ち、それで生徒の見ている音符を指し、それを横に動かしながら、生徒に大きな声で音程を読ませることをよくさせていました。弾いている最中は無理な場合もありますが、例えば「二度上」とか「三度下」といった具合に生徒に言わせます。英語でしたら "up a 2nd" または "down a 3rd"、といった言い方になります。これは、結構効果がありました。
音程の速読
初見演奏には音程の速読が必須です。「これはド」、「これはミ」という具合に音符を読めば、確かに音は取れます。しかし、これでは時間がかかり過ぎてダメなのです。音楽は動いていますので待っていてはくれません。また、これでは「ド」と「ミ」がどのように関係しているかがわかりません。
初見演奏の練習では、この「ド」と「ミ」を「三度の音程」として、視覚的に瞬時に認識しながら行うのです。
「そっちの方がむずかしいじゃない。」と思われるかもしれませんが、音程を認識した方が早く読めるのです。目を横方向に動かすトレーニングをすれば、音程はだんだん見えてくるようになります。
速読のためのウォームアップ
1 まず、白鍵だけで考えてみます。
白鍵を、右方向でも左方向でも、順番に弾いていきますと、音符は、「線」、「間」、「線」、「間」という具合になります。(図14)
「線」というのは線の所にある音符。(line note) そして「間」は、線と線の間にある音符のことです。(space note)
音程の認識と指の関係
1 五枚の並んだ白い鍵盤の上に、五本の指を置いていると想像して下さい。そして次のことをやってみましょう。
五度までの奇数の音程、つまり、一度、三度、五度、は、楽譜の上では「線、線、線」あるいは「間、間、間」となります。例えば音符をド、ミ、ソと考えるのではなく視覚的に、しかも瞬間的に「線、線、線」または「間、間、間」と認識します。(図17)
指の番号は三度の場合、1と3,2と4,そして3と5です。(図18)五度の場合は1と5といった具合に、機械的に鍵盤をさがします。
2 五度までの偶数の音程、つまり二度と四度は、楽譜の上では、どちらかが「線」であれば反対側は必ず「間」となります。(図19)
偶数の音程は奇数の音程より読むのが面倒ですので、はじめは奇数を読んでからプラス1と考えます。例えば四度を読む場合、三度プラス1といったようにです。
こういう読み方の方が、下から順番に、「一度、二度、三度、四度」と数えるよりも遙かに速く読むことが出来ます。
指の番号は二度の場合1と2,2と3,3と4,そして4と5です。(図20) そして四度は1と4,そして2と5です。(図21)
3 六度を弾く場合は、まず五度を指先で感じたあと、親指または小指を一つ外側の鍵盤に移動させます。頭の中では五度プラス1と考えます。
4 七度をとばしてオクターブを考えてみましょう。手の小さい小学生などは、オクターブが届かなくてもいいのですが、ある程度の指のサイズになったときオクターブの距離を指に記憶させなければなりません。
5 さあ、オクターブができれば、七度は簡単です。
まずオクターブを指で感じたあと、その手を鍵盤一つ分縮めればいいのです。頭の中では「オクターブ、マイナス1」、と考えます。九度を弾く理屈はその反対で、オクターブ、プラス1です。
6 いかがでしょうか? これで鍵盤を見なくても九度までは自由自在です。
7 七度に関するオプションですが、ジャズを弾く場合、非常に多くの頻度で七度の音程が出てきます。
実際私自身、七度を弾く場合はオクターブから1を引くのではなく、鍵盤の上を、指の感覚で、一度、三度、五度、と感じ、そして七度を弾きます。
例えばド、ミ、ソ、の三和音のドを右手の1、2,3で感じた後、5の指の感覚でシを弾きます。(図22)
音程の速読を初見演奏に生かす
1 脳が考える前に指がそこにある
さて、音程の速読を、初見演奏のために、どう反映させるのでしょうか。
楽譜の上で、例えばある「線」に音符があり、次の音符がそのすぐ上の「間」だったとします。
最初の音がもしドだったら、次の音を普通、レと脳が判断します。しかし、初見演奏の場合は脳がレと判断する前に、指はほぼ自動的に、隣の白い鍵盤の上で待機しているというものです。
五枚の並んだ白鍵に五本の指を置いた場合、例えば、1と4の指の音程は四度とか、3と5の指の音程は3度とか、考えなくても指の感覚で出てくるようになるのが、ゴールの一つなのです。
2 黒鍵
白鍵ができたら黒鍵は簡単です。白鍵を手がかりに黒鍵を探します。
鍵盤を見ないで手で触れてみますと、黒鍵の方が遙かに発見しやすいですから、慣れてきたら逆に黒鍵から白鍵を発見するということもできるようになります。
3 知識との関係
調の感覚や知識があれば初見はもっと楽です。例えばニ長調の曲を弾く場合、手を基本的なニ長調のポジションに置けば、3の指は自動的にファ♯の上にある、といった具合です。
手を隠すアイディア
手を隠す方法としては、キーボーディング、つまりかつてのタイプライターの練習で行われたように、新聞紙を手の上に置いてみるとか、また、絵を描く画板のひもを短めにして首から下げ、手が見えないようにするとか、いろいろな方法が考えられます。
意外と効果的なのが、生徒が子どもの場合、保護者が子どもの横に座り、教師がするように薄い本を手に持ち、それを子どもの手の上にかざすというやり方です。
ピアノの練習は孤独なものですので、特に子ども達は、誰かが横に座ってくれるとうれしいものです。
とにかく、手が見えないようにさえすれば、どんなに独創的な方法でも良いでしょう。いろいろ試してみてベストな方法を探してみて下さい。
なぜリズムを崩してはいけないのか
初見演奏の練習では、決められた時間内に次の音を探し、そして弾かなければなりません。それが出来ないときは、曲はブツブツ切れたように聞こえてしまいます。
時間内に次の音を弾くためには、その遙か前に楽譜を読んでいなければなりません。音符を見た時点から、実際のピアノの音をが聞こえるまでには時間の差があるからです。その時間差がどういうプロセスかといいますと、
1. 目で音符を見る
2. その音符の前の音との音程を認識する
3. 視神経が脳に伝達
4. 脳がプロセスして
5. 指に命令し
6. 指は鍵盤を弾き
7. 鍵盤はアクションを動かし
8. アクションがハンマーを持ち上げ
9. ハンマーが弦を叩き
10. 弦は振動し
11. その振動が空気を振動させ
12. 空気の振動が耳に届き
13. その振動が鼓膜を振動させ
14. その神経が脳に伝わり
15. やっと音として聞こえます。
一つの音を弾いたと思ったらすぐ次の音へ、そうしたらまたすぐ次へ次へといった具合に、このプロセスを重複しながら前へ進みます。
初めのうちはゆっくりと練習します。一拍に3秒かけても5秒かけても良いでしょう。そして、慣れたら少しずつテンポを上げて行きます。
大切なのは目をどんどん楽譜の前へ進めることです。
生徒にとっては、なんだか追い立てられているような気分ですが、初見演奏の練習では、何が何でも決められた時間内に次の音を弾くというのが原則です。
この時間差のプロセスを、決められた時間内に、しかも継続的に行うため、リズムを崩してはいけないということになるわけです。
根気よく続けますと、初めのうちは一拍先しか読めなかったのが、次第に二拍先、三拍先、一小節先というふうに、徐々に遠くまで見えてくるようになります。
例を挙げるならば、本を朗読するプロセスと多分同じだと思います。
声を出す前にある程度先の方を読み、しかも意味をつかんでいなければ朗読はできません。そうでないとコンピューターが喋っているような変な読み方になってしまうでしょう。朗読するときも我々は無意識のうちにこの時間差を操っているのだと思います。
初見演奏も、続けているうちに、音程を認識するだけでなく、フレーズや、バランス、カデンツ、和音の進行、またはペダルを踏むタイミングまで、だんだん見えてくるようになります。
私のケース
私が初見演奏に目覚めたのは、実は随分遅く、大学院に入った後なのです。
アメリカの大学に入ってからいろいろな学生と会いましたが、アメリカ人学生の初見演奏の出来ることったら、まあ驚きました。
キリスト教徒でない私でも仕事柄随分教会にお邪魔し、数多くの教会専属の音楽家と知り合うことができました。
そこで初めて知った事なのですが、彼らは礼拝の朝になってから「今日はどの賛美歌を弾く」と告げられても全く問題なく仕事をこなすのです。
賛美歌の本の中には600とか700もの曲が入っています。当時の私にとって、どうして彼らが練習もせずにこのような仕事ができるのか、不思議で仕方ありませんでした。
当時の私の初見演奏の能力は非常に低かったのです。鍵盤を全く見ずに賛美歌の四声体の全部を止まらないで最後まで弾く事は正直のところ無理でした。ですから、私が練習を始めたときは、その四声のうちの一声を外し、三声の練習からはじめました。あと、バッハのインベンション(二声)とシンフォニア(三声)を手を見ないで全部通して弾く練習を毎日しました。
大変そうですが、これは演奏の練習ではありません。音を外そうが、間違えようが、どんどん先へ進むトレーニングです。ですから時間はあまりかかりませんでした。インベンションとシンフォニア全部で確か30分位だったと記憶しています。
キーボーディングの勧め
1 キーボーディングの勧め
キーボーディングとはかつてのタイピングの事です。
初見演奏のトレーニングの一部として、私は小学生を含む生徒全員に対し、キーボーディングを勧めています。
アメリカのある中学校では、キーボーディングができないと八年生に上がることができないのだそうです。
アメリカだけではありません。今や世界中の多くの人がインターネットを使っている時代に、メールを送るときに手を見ないでキーボードが打てるということは、むしろ自然な事だと思います。
実際私の生徒の中でもキーボーディングの出来る生徒は初見演奏がよく出来るように思います。
2 2週間でキーボーディングをマスター
アメリカ社会が手書きの文書や論文を受け付けないと知ったのは、私がアメリカに渡った後の事でした。
ディスカウントストアーでタイプライターを買い、その帰り本屋でタイピングの本を買いました。その本は4週間の独学のコースでしたが、その中には正式な手紙文を書く方法とか、数字とか、自分にあまり関係ない部分も含まれていました。ですから、私はそういった部分を省略し、A,B,C,等のアルファベットだけに集中し、最低それだけ打てるようになるよう特訓しました。夏休みに集中してやりましたので、目的達成までは、たったの2週間しかかかりませんでした。
ちなみに、キーボードの上のアルファベットが変な順番に置かれているのは、かつてのタイプライターの構造上の理由からなのだそうです。
一時アメリカではその順番をきちんとA,B,C,と並べ替えようという動きがありましたが、結局ダメになりました。
3 日本のキーボード
そして日本に帰国して、日本で売られているコンピューターを使ってみたらなんと、アメリカのものと随分違うではありませんか。
コロン、セミコロン、アポストロフィー、クォーテーションマーク等の位置が全然違っていました。
その違いには未だに慣れていませんが、最低A、B,Cの文字の位置が同じだったのが幸いして今、生き残っている感じがします。
このようにキーボードの上では最低A,B,C,は日本もアメリカも同じなのですから、キーボーディングをやっておけば初見演奏の練習にもなるということで一石二鳥ではないでしょうか。
まとめ
賛美歌を使ってのトレーニングは、小学校一年生の初心者にはまだ無理です。しかし私は、レッスンを始めたばかりの初心者でも全員、その使っているテキストを使って初見演奏を練習させています。
その結果どうでしょう。私の生徒の中に楽譜の読めない生徒は一人もおりません。
一部のメソッドの中で、このような大切なプログラムが組み込まれていない事を非常に残念に思います。しかし、お金を受け取っているピアノ教師はプロフェッショナルです。どんなメソッドを使おうが、その中に初見演奏のトレーニングを加えることは可能なはずです。やったことのない先生方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
音楽を行うための正しい姿勢の中で、初見演奏は非常に大切な事柄の一つです。しかし、ただ楽譜が読めたからといって、それが必ずしも音楽教育全体を担うというわけでもありません。中級に入ったら、練習する曲が多様になってきます。そこでは作曲家のスタイルや、それぞれの時代の理解、初級で習った楽典の応用等、様々な勉強が待っています。教師は音楽教育の基本の一つである初見演奏とその他の勉強をバランスよくレッスンに取り入れ、本来の音楽を行う姿勢が失われないよう気をつけたいものです。
©2005新谷有功